「断章のグリムIV 人魚姫 下」甲田 学人★★★半☆
「断章のグリムIV 人魚姫 下」甲田 学人
電撃文庫 ISBN:4-8402-3758-1
シリーズ4作目となって、タイトルに偽りありという感じで、グリムとは関係ないじゃんとアンデルセンとかあちこちからネタを調達しています。
さて内容はというと、Missingシリーズ(夜魔も含む)に近づくような盛り上がりが期待できるのでしょうか。
今回は上下巻の下です。
ということで出版社から、あらすじを引用しておきます。
あらすじ:
血の泡に浮かぶ人魚姫の幻影が、死の連鎖を誘う……。
じりりりりりん!
寺の敷地内にある住職一家の住居に、不意に電話のベルが鳴り響いた。くぐもった遠い電話の音は、音が夜に食い尽くされたかのような静寂の中を虚ろに繰り返して、響き続けた。血と、腐った磯と、そして石鹸の匂いが混じったような、異様極まる臭いがただよう住居の中に──。
神狩屋の婚約者の七回忌前夜、人魚姫の物語をなぞる惨劇は、蒼衣たちが訪れた海辺の町全体に広がっていく。そして、死の連鎖を誘う人魚姫の真相が明かされる時──。
鬼才が贈る悪夢の幻想新奇譚(メルヘン)、第四幕!
感想:
読後の感想、面白かったです。
今まで、ホラー的なコードで書かれていながら、作者はスプラッタは嫌いとあとがきで書いていましたが、何となくやりたいことが見えてきた感じがします。「ミステリ」ですね。
今までどうも、グロテスクな部分や自傷癖などショッキングな描写にこ眼が行っていて、スプラッタホラーの色合いばかりを語ってきましたが、主人公は蒼衣くんなんですよね。彼の<断章>の性質は、まさにミステリですね。すべての謎が解明されないと発動しない。それが、明らかになった(藍麦が気付いた)巻でした。
怖さだけをいうならば、上巻の方が圧倒的に怖いです。というか下巻は怖くないです。スプラッタ的な不快感もあまりないです。とはいえ、オカルト好きな評者が言うことなので、オカルトやホラーに免疫のない方は鵜呑みにしないでくださいね。
でも、謎解き=蒼衣の<断章>が強調された結果、雪乃が目立たなくなっています。彼女の<断章>の能力が戦闘に特化しているので、謎解きとの相性が悪いのでしょう。蒼衣と雪乃のバランスをどうやって採るかが今後の課題でしょうか。
<以下、本の中身に言及している部分があります。未読の方はご注意を>
あと、八百比丘尼は無理があるでしょう。あまりにアンデルセンと違和感がありすぎです。たしかに神狩屋さんの謎解きにはぴったりで、「断章のグリム」であることを無視すれば面白いのです。でも、童話をモチーフにしていることを考えると、それが日本の童話と言える内容でも、そこから浮いています。
苦しくとも、アンデルセンでまとめて欲しかったな。

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