「荒野」桜庭一樹★★★★☆
「荒野」桜庭一樹
文藝春秋 ISBN:9784163270401
えっと、桜庭一樹さんの直木賞受賞後第一作です。
彼女の昔からのファンならば、「荒野」ってタイトルから想像できる通りに、ファミ通文庫で出ていた「荒野の恋」の改変ですね。
帯の受賞後第一作っていうのは、異論ありだなぁ。
モチーフになっている五木寛之の「青年は荒野を目指す」も新装版を出すようだし、どうも文藝春秋のやることはあくどいなぁ。
ということで、あらすじを出版社から引用しておきます。
あらすじ:
[第一部]
鎌倉で、蜻蛉のような恋愛小説家の父を持つ山野内荒野、十二歳。大人以前。中学校入学の日、閉まる電車のドアに制服を挟まれた荒野は、文庫本を熱心に読んでいた少年に助けられた。文庫少年と同じクラスになるが、荒野の名前を聞いた途端、なぜか冷たい目で睨む。大人びた美人の江里華、活発な麻美という友達もできた荒野。ようやく恋らしきなにかをつかまえたとともに、身近な大人たちの暗く熱く湿った感情にも気付き始める。
[第二部]
荒野、十三歳。大人になるすこし前。荒野が心を寄せる相手は遠く海を渡ってしまい、たまに届く手紙を楽しみにしている。女の子も男の子も恋の話題に敏感で、カップルもちらほら成立する。しつこいニキビに悩まされる荒野は男子と話すのも苦手だったが、そんな荒野に好意を寄せる男子もあらわれた。義母の蓉子さんが妊娠し、家の中も空気もとろりと変化していく。
[第三部]
荒野、十五歳。荒野の想い人、悠也は海の向こうから戻ってきて東京の高校へ進学。麻美は年上の新しい彼氏と付き合い始め、美しき江里華は孤高を貫いている。荒野には妹が誕生し、今まであんなに女の気配で満ちていた家の中が不思議なほど静けさに満ちていた。そんなころ、父・正慶の本「涙橋」が恋愛小説に贈られる賞の候補になるが、その中で描かれていた女というのは……。荒野、子供から大人へ。時は流れた――。
感想:
前振りで書いた通り、この本は、ファミ通文庫で2巻まで出版されていた「荒野の恋」を第1部、2部にして、予告されていた最終巻を第3部にして、1冊にまとめたものです。
自分は、このお話しが好きで、ずっと最終巻が出るのを楽しみにしていました。「赤朽葉家の伝説」の感想や、「青年のための読書クラブ」の感想でも、本論を放っておいて、早く「荒野の恋」を出せって書いています(汗)。
で、ようやく出たと思ったら、こういう形式ですかいっ。1巻と2巻を持っている人は、その分のお金を再度払えって言うことですね。酷いぞ文藝春秋。ライトノベルを買っているやつらなんて、どうでもいいんでしょうね。だから文藝春秋は嫌いなんだ。
それは置いておいて、お話し自体は楽しめました。
ミギーさんの水彩イラストがないのは残念でしたが。
本当は、第3部は、最近の桜庭人気に寄り掛かって、もっと壊れた感じのどろどろ展開にするのかなと思っていたんですが、1〜2部の「コバルト」テイストは残したままで、良い仕上がりでした。桜庭さんは、お話しとして一本筋を通したって感じがします。
「荒野の恋」の楽しみっていうと、パパを含めた山野内荒野の周りの人たちっていう人が多そうですが、個人的には芯の通った荒野の心情だと思っています。そういう意味では、「コバルト」テイストって書きましたが、少女小説の形態を模写している感じがします。
自分は荒野が感じる空気が非常に好きで、感情移入がしやすいです。きっとライトノベルやジュブナイルを読み込んでいるからだと思うので、純文学というか大人小説からこの本を手にとった方がどう感じるかを聞いてみたい気がします。「古くさい」って感じる人も多いような気もしますが、それは一面的な見方でしかないでしょう。
さて、次はGOSICKシリーズを是非にお願いします。

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